ただいまー、と部屋のドアを開けた僕は絶句した。

「んあ?…あ、古泉、おかえり」

顔を赤くした彼が満面の笑みを浮かべて上記のセリフを言ったからである。
耳と尻尾もあって上機嫌そうな上に、滅多に見れなくなってしまった笑顔付きである。その上服は僕の大きめのワイシャツ一枚。これで参らない方がおかしい。
…じゃなくて。

「…ゆきりん」
「んー?ああ、いっちゃんおかえりー♪」
「おかえりー、じゃないでしょう。彼に何をしたんですか?」
「何って…これ?」

と指し示す先には缶チューハイが置かれている。いや、酒くらい彼に飲ました事はあるが、こんな状態にはならなかったはずだ。

「じゃなくて、猫を酔わす物と言ったら決まってるでしょ?」

そう上機嫌で彼女の指差す先には、いつの間にかわざわざ持ち込んだらしい香炉が置かれていた。
もしかして、

「もしかしなくても、…またたび、とか」
「せいっかーい!」
「笑顔で言わないで下さい!」
「えー、だってー、一人で酒盛りとか寂しいでしょー?いっちゃんいつ帰ってくるかわかんなかったしー。だからキョンくんにつき合ってもらったのー」

だからって、彼を酔わせる事無いでしょうに…。

「ま、正しくは酔ったっていう状態じゃないんだけどね。ハイになってるというか」
「それを人は酔ってるって言うんですよ、ほら、もう良いですから早く帰って下さい」
「むー、いっちゃんが冷たいー。折角キョンくんの様子見てあげてたのにー」
「ええ、それには感謝してますよ。今度はどうかお酒以外で彼の面倒を見てあげて下さいね」
「ひどいー、つめたいー」

まだぶーぶーと文句を言う彼女は無視して、荷物を持つとタクシーを呼んで、彼女の家まで送ってもらうよう告げてそのまま彼女を送り出した。キョンの面倒を見てくれるのは嬉しいのだが、如何せん方法が…あれさえ無ければいいのだけれど。
…さて、問題は彼の方である。

「古泉…」

と、僕の名前を呼びごろごろと喉を鳴らす彼は完全に甘えモードで、久々のそれは嬉しい。嬉しいのだが。

「…この状態で言われるのは複雑なんですよね…」

何しろ、姿形があまりにも”彼”に似ているのだ。耐えろと言う方が厳しい。
こんなことならもっとちゃんとした格好をさせておけばよかっただろうか。彼が嫌がるのだから難しい話だが。

「こいずみー…」
「はい。僕はここにいますよ。酔っぱらった状態なんですから、今日はもう早く眠って下さいね?」

僕にすり寄る彼に心の中で呪文のように「自制しろ自制しろ自制しろ自制しろ」と唱えながら頭を撫でる。だがどうもそれでは不満だったようだ。

「酔っぱらってなんかない。俺はまともだ」
「いつもはそうやって甘えたりしないじゃないですか」
「そう言う気分なんだっ」

…段々子どもを相手している気分になって来た。そう言えば昔の彼はそうだったなぁ、と少しだけ懐かしく思う。
そう思っているうちに彼が膝の上に上って来た。まずいまずいまずい。本格的にまずい。

「えっと、あの…降りていただけませんか、ね?」
「嫌だ。なんで嫌がるんだよ」

嫌がると言うかまずいんです。色々と。特に下半身の事情が。
答えない僕にイライラしたのか、彼は顔を近づけて来た。そして、べろりと唇を舐められる。
思わず固まった僕を誰が責められるだろうか。

「いつの間にか敬語で話して、名前も呼ばなくなって。…寂しいと思ってるのは、俺だけかよ…」

呟かれた一言は、僕の理性を崩壊させるには充分すぎた。
間近にある頭を引き寄せて、唇を触れ合わせる。いつもなら顔を近づけるだけで嫌がる彼も、今日ばかりはもっと、と言うように自分から体を密着させて来た。
腰を引き寄せて、そのまま尻尾の付け根を弄れば口が開いて、そっと舌を忍び込ませる。鋭い犬歯を舌でなぞれば、ふるりと小さく体を震わせた。

わかっている。自分でも。
彼は彼と同じ姿をしていても、違う存在なのだと。
けれど性格や口調まで同じで。
身代わりに彼を抱こうとする僕は、愚かなほどに浅ましい。
でも、それでも。

ワイシャツのボタンを外し、素肌に触れる。くすぐったいのか、僕の胸に彼が頭を押し付け目の前で揺れる耳に誘われるがまま軽く噛み付いた。

「う、な…ぁっ」

耳がぱたぱたするのが面白くて息を吹き込めば睨まれた。苦笑しながら彼に問いかける。

「どうして欲しいですか?」
「…敬語、やめろ」

どうやら敬語はお気に召さないらしい。

「他には?」
「…もっと名前、呼べ。あなた、じゃなくて、ちゃんと」

思わず嬉しくて笑うと、それが気に入らなかったのか首に噛み付かれた。ちょっと痛い。
お返しとばかりに内股の際どい辺りをなで上げれば、びくっ、と彼が反応を示す。

「…手つきが意地悪い」
「どういう意味かな?」
「…とっとと触れって言ってるんだよっ」

元から赤い顔を更に赤くさせて言う彼が可愛くて、額にキスをする。
同時に、もう勃ち上がりかけているそれに触れて、優しく扱く。

「ふ、ぁ、…な、…う…っ」

ごろごろ、と喉を鳴らしながら、ぱたぱたと尻尾が揺れる。
ふと悪戯を思いついてしまって、酷い飼い主かな、と思いながら指に唾液を絡ませ、彼の小さな窄まりに押し当てる。

「な、…ぁう…っ」

講義するように彼が一声鳴くが、抵抗はしない。
これ幸いと僕はそのまま外側をゆっくり慣らしながら、指を押し入れる。…量が足りないかな。
膝の上に乗っている彼をソファの上に押し上げると、うつぶせにさせる。そのまま従っていた彼だが、僕がそこに顔を寄せたあたりでやっと気がついたらしく、体を捻って抵抗しようとするが、遅い。

「ひ、ぁ、…や、そこ、やだ…っ! やめ…っ」

口では嫌がっているが、体の方はすっかりその気のようで、大きな抵抗が出来ていない。舌を窄めてそこに押し込むと、唾液を流し込む。ローションを取ってくればいいのだろうが、その間に彼の気が変わっても困る。…いや、きっとただ単に僕が待ちきれないだけなのだろうけれど。

「ぁ、あっ…!」

妙に力んでしまうのか、彼の体がびくびくと震える。
たっぷりと唾液を流し込んだ後、再びつぷり、と指を埋めた。舌で随分解したお陰か、難なく指の一本は飲み込まれて行き、二本目を押し込む。

「っ、う…」

久しぶりなせいか、流石に少し苦しそうで、今考えている事を実行するのは躊躇われたが、大丈夫だろう。
ぐるりと中を掻き回せば、にゃぁっ、と字面だけは猫らしい声が返ってきた。
そのまま三本目を入れられるだろうと思ったのだろう、そこで指を引き抜くと彼はとても意外そうな顔をした。拍子抜け、とでも言うべきか。
そんな彼に僕は微笑むと、彼の尻尾の先を口に含み、唾液で濡らす。…あとできちんと風呂で彼を洗わなければならないだろうな。
そこまですると彼ももしかして、とは思ったらしい。尻尾をバタバタと動かしてみせるが、手で捕まえているのだ、抵抗も虚しく僕はそれを彼の後ろに押し当てる。

「や、め…っあ、ああっ…おま、さい、ってい…!」

涙目で睨まれてもどうしようもない。まだ序の口のつもりなのだから。
指と一緒にそれを奥まで押し込む。片手で尻尾を押さえながら指を抜き、そのまま片手は入り口で固定する。抜かれてしまっては面白くない。

「っ…ふ、ぁ…」

尻尾を動かさないようにしよう、と頑張っているのだろう、彼がキツく目を閉じて、嗜虐心を煽られる。

「ひ、ぁ、あっ」

空いている手で彼の屹立した物を扱けば、集中力が途切れるのだろう、尻尾までもがぐにぐにと動いた。

「っや、…これ、嫌だ…っ」
「キョンの方が誘って来たんだから…ね?」

そう言えば少しの間黙り込んだが、すぐに口を開いた。

「これじゃなく、て…お前のが、いい…っ」

なるほど。賢い彼の事だ、学習はしているようだ。
けれどそれこそが僕の目的だと気づかない辺りはまだまだと言うべきか。

「いいよ、今、入れてあげるから」
「え、なん、で…っ…や、やだ!やめろ!…ぅあっ」

入れるからと言って、抜かなければならない道理はない。それに、尻尾だ。僕の物よりは随分と細いので、僕の物を一緒に押し込んだ所で問題はないだろう。
それでも自分で抜けないか尻尾をバタバタさせた結果、結局それは中で暴れるだけで彼から抵抗する力を奪う結果になっている。
彼が強く抵抗出来ないのを良い事に、僕は自分の物を彼の中へ押し入れる。

「に、ぁ、ああぁっ、や、やだ…っ!」
「っ…」

流石に前より、僅かにきつい。
けれど不規則に動く尻尾が、予想以上に気持ちいい。最もそれは彼も同じようで、ぽろぽろと涙を零すほどに身もだえている。

「ぁ、あ…っ…お前、なんか…嫌い、だ…っ」
「嫌いなら、こうされるのも嫌だよね?抜こうか?」
「っ…そういうとこ、もっと嫌いだ…!」

涙に濡れたままの瞳で、睨み上げられる。大事にしたいと思いながら、いざとなればやっている事はこれなのだから自分でも質が悪い自覚はある。

「…好きだよ。キョン」

だからせめて、気持ちだけは素直に伝えようと思う。
もしキョンが、彼と関係があるのだとしても、ないのだとしても。

「…嫌い、だ」

そう言いながら体を捻ってキスを強請る、素直じゃない可愛い彼のために。





ただ今回は割と本気で嫌だったらしく、このあと風呂に入れてから三日ほど、まったく口をきいてもらえないと言う自体に陥ったのは少々痛手だったが。




愛しい家族は、大事にしましょう。




























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