「遅いぞキョン!もっときびきび!みくるちゃんも、もっとしゃんとして!古泉くんは大げさすぎてきもい!」
『…酷くない(です)か、それ…』
ぜーはーと息を吐きながら、三人で呟いた。
何せ先ほどから踊りっぱなしなのだ。これが疲れずにいられるだろうか。
「ちょ、ちょっと休憩しようぜ…」
「ったく、だらしねーなぁ。…ま、いいけどさ、じゃあ10分休憩するから、水分補給。んで、台本読んどく事」
現在俺たちはダンスと劇の台本読みの同時進行中である。ちなみにレコーディングは終わっているので、あとはこの歌のタイミングにダンスを覚えて合わせるだけ。しかし以外と難しい上に、ややこしいのだ。
「ううう…この台詞言えるかどうか心配です…」
「あー…ここは…演技力の問題ですよね」
「…でも、ぼくも男ですから頑張りますっ」
と、朝比奈さんは演劇に意欲を見せている。まあ、今回は生徒だけじゃなく一般客も多いはずだから、精々バカにされないようにはしたいものだ。
「ふふ、バカにされる、というのは大丈夫だと思いますよ」
「何でだ?」
微笑む古泉に俺は問いかけた。
「うちの学祭は姫を目当てに来てる方も多いからですよ。もちろん、それ以外もですけれど、今年は涼宮さんが大いに張り切ってますからね。成功しないはずがないでしょう」
「そうか…」
ちょっとだけほっとしたのもつかの間。
「ほらほら!再開するぞー!」
「今度はビデオを撮るから、各自で自分の動きを後で確認した方が良い」
練習再開である。
「そこ!もっと元気よく!」
「…もうすこしはっきりとした動きで」
出来るか!と言ってしまいたいところだが、二人とも俺たちのダンスを指摘しながら自分たちのパートもしっかり覚えているのだ。文句は言えまい。
それにどうも、二人も劇に参加する。その上何やらまだ計画しているらしいのだ。
「…なあ」
「ん?」
「大丈夫なのか?そんな色々やってて。休む暇もないんじゃないのか?」
心配する俺に、ハルヒが一瞬きょとんとした顔をする。その後すぐに笑って、
「った!」
デコピンされた。
「バーカ、オレと有希がそろって出来ない事なんかないんだよ。オレたちの事心配してる暇があったら、お前らがやらなきゃなんないこと先に全部終わらせてからにしろっての」
ハルヒは朗らかに笑うとビデオを確認しに立ち上がる。額を押さえていると、くしゃりと頭を撫でられた。
「…倒れるほど無茶はしていない。あなたが心配しなくても、大丈夫だから」
「長門…」
「心配してくれて、ありがとう」
少しだけ目を細めた長門は、そのままハルヒの傍まで歩いて行く。一連の流れを確認しているらしい。
「…ま、今の所こんなもんか。後でDVDにやいとくから、それぞれ見とくように。じゃ、お疲れさん」
今日はこれで解散らしい。ハルヒたちはこの後衣装制作に移るんだとか。
「…あいつ、クラスの制服まで請け負いやがったからな」
「ええ。…でも、本当に楽しそうですね、涼宮さん」
「それでも、やっぱりちょっと心配です」
「おう、遅かったな、また姫の仕事か?」
「ん、まあな。どうだ?そっちは」
「大方決まってきたとこ。涼宮が早いうちに制服デザインを出して来てくれたからな」
そう言って谷口が見せたのは内装のデザインだった。お前が書いたのか?
「馬鹿いえよ。俺にそんな才能あるかっつの、国木田だよ、国木田」
「へえ…凄いな」
「褒めても何もでないよ。それに、僕だけじゃなくてクラスの皆が出してくれた意見で出来たデザインだし。大変なのはこれからだよ?」
褒められた当人は逆に忠告を返して下さった。ま、国木田らしいか。
「材木も、ペンキもバッチリ準備できるってよ。ペンキは早めに塗ってどっかに保管して匂いを飛ばさなきゃな」
「それにしても…キョン姫がいなきゃ自分達で一から作る、なんて思いつかなかったよな」
う、よせよ。今までそれが当然だっただけだって。
何しろこの金持ち集団、文化祭と言えば業者に頼んでやってもらうのが当然、って感覚だったんだから驚きだ。
「それにしても…凄いな、ちゃんと設計図みたいになってる」
「みたい、じゃなくて設計図なんだってば。あ、この設計図は僕が書いたんじゃないけどね。建築家志望がいて助かったよ」
うん、それは俺も思う。素晴らしい事にこのクラス、シェフ志望だとかパティシエ志望だとかそんなんがごろごろ居るからな。顔が良い奴も多い。
「流石に厨房用の設備とかは持ち込めないからな、その辺は素晴らし過ぎる調理室を借りるか…いっその事無駄に広過ぎるグラウンドに建物を建てるかだな」
「良いんじゃないか?そっちのがよりアリスハウスっぽいだろ」
俺の意見に誰かが同意した。
「一応ちゃんとした建築家、もしくは現場監督のような方に立ってもらって、自分達で組み上げてはどうでしょう?この中に、大工の棟梁の息子、なんて方もいらっしゃるでしょうし」
古泉がそう声をかけると声が上がった。…よし、行けそうだな。
「じゃあ、これで決まりだな」
「みなさん、頑張りましょう」
おー!
文化祭の日は、刻々と近づいて行くのだった。
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