翌日目が覚めた時古泉が隣にいて驚き、昨日の自分の恥態を思い出して古泉をベッドから突き落とすという暴挙をしでかした。
「あなたが離して下さらなかったんじゃないですか…」と盛大にぶつけた頭と腰を擦りながら恨みがましく俺を見る古泉だったが、パニック状態の俺はそんなこと聞いちゃおらず(と言うかそんな誤解を招きそうなセリフ、聞いていたら更にパニックを起こしていただろう)、
「で、出てけーーーっ!!」
と大声で古泉を追い出してしまったがために生徒会の連中には全部バレてしまった。まあ皆、「おめでとう」やら「お幸せに」、などの反応だったので概ね問題ない。…「で、どこまで行った?」と興味津々に聞いてくるハルヒと鶴屋さん以外は。
そしてこの数日、自分は案外嫉妬深かったんだな、とほとほと呆れさせられている。
例えば、クラス。
古泉は姫だから、いや姫で無くても顔が良いせいか、結構モテる。それは勿論以前からのことで、自分もよくわかっているつもりだった。…どうやらつもりだけだったみたいだが。
「古泉、あのさ…」
「一樹ちゃん、ちょっと良いかな」
「いっちゃん、いっちゃん」
古泉、はまだ許そう。一樹ちゃんにいっちゃんって何だよそれ!
…落ち着け俺。前から呼ばれてただろうが。仮にも姫なんだ、みんなのアイドルなのは仕方がないし、だからこそ付き合ってるとか言っちゃダメだろう。
幸いにも昼は前から俺と食っていたので今更断ったところで怪しまれることはない。
しかし古泉がいくら笑顔でバリアを張っていたとしても馴れ馴れしい輩というのもいるもので、その度にイライラし、バラしてしまいたくなる自分を必死に自制した。
極めつけは、生徒会である。
姫の仕事で朝比奈さんと絡むこともあればハルヒが採寸で体に触れる。そんなのまでいちいち妬いてちゃキリがないと思うのだが、俺の精神はそうはいかないらしく、ズキズキムカムカとする感情と闘うのに必死だったりするから質が悪い。
わかってる。わかってるんだ、全部自分の身勝手な嫉妬なんだって。
だからこそ誰にも打ち明けることが出来ない。ましてや古泉に言えるわけなんてない。
ということで数日うだうだ思い悩んでいた俺に、流石にハルヒが気が付いた。
「最近なんかあったのか?」
「いや、別に何も…」
「嘘ついてどうすんだ。ちゃんと話すまで問い詰めるからな」
…どうやら白旗しかないらしい。まあ、確かに誰かに相談しなければパンクしてしまいそうだったんだが。
「…嫉妬深かったんだな、って」
「キョンが?」
頷いて話を続ける。
「姫なんかやってるんだから人が集まるのは当たり前で、そうじゃなくても古泉はモテるだろ。そんなことわかってたつもりだった。…だけどいちいちその事に嫉妬してる自分がいて…」
「そのくらいは相手が好きなら普通だろ?」
「でもな、そこまでならまだいいんだろうが、一般生徒だけじゃなくて、生徒会の連中と一緒にいる時でも独占欲の塊みたいになって、凄く苦しくなる」
みっともなくて、情けない。
「恋愛なんてみっともなくて情けないものだろ。綺麗なだけが恋愛じゃないんだから」
「わかってる。…サンキュ、聞いてもらったら少しだけ楽になった」
「あ、キョン!」
ハルヒの制止する声を無視して俺は部屋に帰るため歩き出した。
話せたのは良かったが、自分の醜さを浮き彫りにして、更に苦しくなった気がする。
今は一人、部屋に籠ってじっとしていたい気分だった。
「…そんなの、古泉くんも一緒だろ…」
ハルヒのそんな呟きが、俺に届くことはなかった。
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