結局それ以降も俺は意地を張り続ける事をやめず、もやもやとした気持ちを抱えたまま日々を過ごしていた。
思い返せば返すほど、案外俺は嫉妬深かったんだ、結構前から古泉の事気にしてたんじゃないか、と思わされるような出来事ばかりで、驚くやら溜息をつくやら、である。
ハルヒも、あれから何も言わない。今まで通り、普通に俺に接しているし、古泉の事について意見して来る事もなかった。そのことに俺は少しだけ安堵した。これ以上、自分を暴かれる事が怖かったからだ。

臆病だと、自分でも思う。

好きなら、嫉妬してる、独占したい、なんていうのは多分当たり前だ。でも、俺はそれを誰かに晒すのが怖い。今までの自分が崩れて行きそうで、壊れてしまいそうで。
しかし、いくらなんでもそろそろ古泉も気づいたらしく、ある日の夜、突然俺の部屋を訪れて来た。

「すみません、こんな夜分に」
「いや、それは別に構わない」

何か飲むか、と聞くと古泉は首を振った。その様子はどこか堅く、何かを決心したような顔をしていた。

「…遠回しに聞いてもあなたはきっと誤摩化すでしょうから、単刀直入に聞かせていただきます」
「なんだ?」
「悩んでいる事が、あるそうですね。それも、僕との事で」

ドキッ、とした。

「…ハルヒか?」
「ええ、半分は。…悩んでいらしゃったのは、流石に僕も気づきましたが」

気づかれていたのか。だとすれば、多分、他の連中にも。

「…そんなにあからさまだったか?」
「いえ。…僕はあなたを見ていましたから、それで」

と古泉は苦笑する。…見てれば気がつくのであれば、やはりあからさまだったんだろう。

「話しては、いただけませんか?」
「…ハルヒから聞いてるんじゃないのか?」
「あなたが僕との事で悩み、苦しい思いをしている、ということだけ」

ハルヒは言わないでいてくれたらしい。いや、もしかしたら自分でそのくらい言え、という意思表示なのかもしれないが。

「…聞かせて、下さい」

言うべきなのだろうかと迷う俺に、古泉は言う。意を決して俺は口を開いた。

「…自分の嫉妬深さに、辟易したんだよ」
「嫉妬、ですか?」

俺は頷く。

「お前は、顔が良いだろ、それに、姫だってやってる。だから人が集まって、モテるのも当たり前だって分かってたつもりだった。だけど、つもり、だけだったんだよ」

古泉は何も言わず、ただじっと俺の話を聞いている。

「一般生徒だけならまだ良いんだ、だけど、ハルヒ達にも、嫉妬してる自分がいて…それが、情けなくて仕方ないんだ、どろどろとした汚い感情ばっか渦巻いて、苦、しい…っ」

泣くな。そう思うのに勝手に涙は目から溢れた。情けない、みっともない。古泉にも呆れられたに違いない。
しかし、古泉は俺の予想に反して、俺をぎゅっと抱きしめた。

「こい、ずみ?」
「…こんな事言うと怒られそうなんですけど、嬉しいです」

なんだって?

「嬉しいんですよ、嫉妬するのは僕だけじゃないんだってことが。…あなたも僕を、すべてに嫉妬してしまうくらい好きだって思っていてくれた、ってことが」
「…お前、も?」
「ええ。…あなたは自覚が無いようですが、あなたは僕以上におモテになるんですよ」
「は?」

俺が、モテてる? 嘘だろ。

「信じないならそれでもいいですけど…僕も結構、嫉妬してたんですよ。一般生徒はもちろん、涼宮さん達にも、ね」

それに恋人の僕より先に涼宮さんに相談したってこと、結構ショックだったんですからね、と古泉は少しだけ怒ったような顔をする。

「う…すまん…」

思わず謝ると、優しく額に、まぶたに、キスをされた。

「良いです。ちゃんと、話してくれましたから」
「ん…」

唇にも優しいキスをされて、もっと、と強請るように古泉にすがりつく。…後で思い出したら恥ずかしくて死にそうだ。

「…ねえ、キョンくん」

君を、僕にくれませんか?
そう古泉に熱く囁かれて、吐息とともに俺は頷いた。今度は深く強く口づけられながら、ベッドに移動する。

「ちょ、…っと、待ってくれ…」
「…なんですか?」
「…電気、消さないか?」

そう言うと、駄目です、と口調だけは優しく咎められた。

「恥ずかしいんでしょうけど、僕はあなたの全てを見たいんです。…見せて、くれませんか?」

少しだけ躊躇って、それでも俺は頷いた。顔が見えない方が不安かもしれない、とも思ったからな。
再びキスをされて、うっとりと目を閉じる。キス魔か!というくらい古泉はキスをするのが好きで、更に上手い。…経験、色々あるんだろうな。

「経験がある、というよりは色々調べて勉強しましたから」
「調べて、って…」
「いつ頃か、という問いでしたら結構前ですよ、少なくともあなたと出会ってからではありますが、お付き合いさせていただくよりもずっと前です」

俺のスウェットをまくり上げながらそういう古泉に、俺は思わず絶句する。

「呆れましたか?」
「…ちょっとだけな」

くす、と笑いながら古泉が鎖骨の下くらいに唇を落とす。少しだけくすぐったいような痛いような感覚の後、鬱血の痕が残る。
なんだか古泉だけ服装が乱れていないのも癪なので、悪戦苦闘しながら古泉のシャツのボタンを外して行く。

「ふふ、…変なとこ不器用ですよね」
「笑うな!そういうお前は変なとこ器用なんだよ…っ」

おや、それはすみません、とちっとも悪いと思ってなさそうな口調で返された。…その余裕がムカつくんだ。

「余裕そうに見えるんでしょうけど…僕も結構余裕ないんですよ」

ほら、と手を掴んで胸に押し当てられる。微かに、でも、早鐘を打つ鼓動が伝わる。

「…ね?」

何も言えずに、俺はこくりと頷いた。

「僕も一緒なんです。だから、あまり緊張しないで下さい」

そう言って、古泉が胸の突起を口に含む。お前な…!

「そんなとこ、口に含むもんじゃ…ぁ、ん…っ」

くすぐったいような、気持ちいいような感覚に小さく声が漏れる。

「とりあえず濡らした方が摩擦が少なくていいかと思いまして」
「く、すぐった…しゃべんな…っ」

直接的な気持ち良さではないが、じわじわと熱が上がって行くのが分かる。もう一方の突起も口に含まれて、唾液で光るそこを指で優しく摘まれた。

「んっ…女じゃないんだ、…んな、とこ…っ」
「でも、気持ち悪いわけじゃないんですよね?」

思わず黙り込んでしまった俺に、古泉は再びくす、と笑う。いかん、墓穴を掘っている。
じゃあいいじゃないですか、と言わんばかりに再び古泉はそこを舌で転がしたり、指の腹でつぶすようにして愛撫し始めた。

「ぁ…や、そうじゃ…なく、って…」
「…なんですか?」

…あくまでも言わなくてはならないらしい。くそ、俺にこれ以上掘り進めろというのか!

「…し、たも…触って、欲しい…」

消え入りそうなくらい小さな声で俺が告げると、古泉が少々驚いた顔をした。ああちくしょう今すぐ穴に入って消えたい!

「…可愛いですよ」

おそらく真っ赤になっているであろう俺の耳にキスしながら古泉は囁いた。うるさい、そんなこと言われても嬉しくない。
耳を甘噛みしながら古泉の手が腹を撫でるようにしながら下へ向かう。するりと手が忍び込んで来て、どうしようもなく体は期待するように震えた。
他人に触れられる感覚というのは当たり前なのだがやはり違う。下着越しになぞられただけで熱い息が溢れる。

「…やっぱり、気持ちよかったんですね。…ここ、もう勃ってますよ」

更に顔が赤くなって、恥ずかしさで思わず涙が滲むのが分かった。生理現象だろ!
自分だけ、というのが嫌で、俺も恐る恐るとはいえ古泉のスボンに手を伸ばす。少しだけ古泉は息をのんだが、俺のしたいようにさせてくれるらしく、何も言わない。
震える手でベルトを外し、チャックをおろし、古泉の性器に触れる。初めて触れる他人のそれは、思っていたより熱い気がした。
直接触れて、手を動かし出したのはほぼ同じタイミングだったと思う。

「んぁ、は…っ…く、」
「っ…」

古泉が上手いのか、はたまた俺がぎこちないせいか、俺ばかり感じて煽られているようで悔しい。それでも、古泉が俺の手で感じているのかと思うと、妙な優越感があった。
古泉が手を動かして、その動きをなぞるように俺も手を動かす。自分で殆どやった事もない身としてはどこが感じるのかよくわからないからだ。
しかし段々古泉の表情で何となくここが感じるのか、とか分かるようになって来て、古泉の動きを追うのをやめ、自分の思う通りに動かしてみる。
そうすることで古泉が感じているのが分かると、妙なくらい自分でも興奮して来て、ますます変な気分になった。

「ぁ、あ…っ…こ、いずみ…好き、だ…っ」
「、ぅ…っ…僕も…好き、です…」

キスをして、お互い最後の刺激とばかりに先の方を指で押しつぶす。甘い悲鳴はキスに飲み込まれて、お互いの腹を白い物がべったりと汚した。

「っ…は…」
「…気持ちよかったですか?」

素直に頷くと、古泉が触れるだけのキスを数回唇に落とす。手近にあったティッシュを手に取って軽く拭いた後、洗面所に向かい、水で濡らしたタオルでさらに服についたそれを拭き取った。
まだこの先も何かあるんじゃないかと思っていた俺としては拍子抜けで、されるがままに古泉に後始末を任せてしまった。

「…今日は良いんです、ここまでで」

急ぎすぎても、あなたを不安にさせてしまうでしょう?と、俺の思考を読み取ったのか古泉が困ったように笑いながら言った。

「大事にしたいんです。だから続きは、また今度」

そう言いながらまぶたに優しくキスをされ、抱きしめられると凄く安心できて、そのせいか睡魔が俺を襲って来た。

「眠たいのなら、僕はそろそろ…」
「待て」

声をかけて服を掴むと、面白いくらい古泉は狼狽した。

「離れたくないんだ。…生殺しかもしれんが…一緒に、寝てくれないか?」
「…生殺しですね、また」
「う、…すまん」

けれどもこの温もりを今はまだ感じていたかった。しかしそれは古泉も一緒だったのか、すぐに頷いて、俺を抱きしめるようにして布団に潜り込む。

「…おやすみなさい、愛してますよ」
「ん…俺も、愛してる…」

古泉に抱きしめられていたせいか、久しぶりに俺は穏やかな眠りについた。


































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