「へー、やっぱ細いなー」
「ぎゃあああっ!」

つぅ、っと後ろから背筋を撫でられつつ耳に息を吹きかけられた。ぞわりと悪寒がして、思わず悲鳴を上げる。

「色気ない。どうせならもっと色っぽくさぁ〜」
「出来るかアホ!何しやがる!!」

怒りつつ振り向くと……涼宮は既にマッパだった。せめて腰にタオルを巻け!!

「えー、良いじゃん別に減るもんで無し。それに男同士だろ?」

お前にはデリカシーとかモラルって言う言葉はないのか!

「ない」

きっぱりと言い切られてしまっては反論のしようもない。

「うんうん、やっぱお前を姫に選んで正解!この細さは姫向きだって」
「ええい、じろじろ見るな!」

先ほどのように不意打ちでセクハラをかまされるのも嫌過ぎるがな。

「ああでも…本当に、細いんですね、あなたって」
「嫌味かこんちくしょう」

そう言う古泉は顔以外は割とふつーの体型をしていた。これなら涼宮のがまだ細く無いか?

「そうかもな。あ、あとそれ」

どれだ?

「バッカ、漫才やってんじゃねえって。その涼宮って呼び方。ハルヒで良い、つかハルヒって呼べ」

些か高圧的な言い方ではあるが、こいつだと気にならないのは何故だろうな。

「さー、タオルなんてとったとった!風呂にタオル持ち込むのは邪道だぜー?」

そうはいうが…と辺りを見回すと、姫である三人以外誰もタオルを巻いてやがらねえ。つっても総勢六人だが…男子校ってこんなものなのか!?

「さぁ…他の学校を知らないのでなんとも…」
「とらないならこっちから剥がすぞ? あ、そうそうキョン、みくるちゃん顔に似合わずすっげーんだぜー?」

何が? いや聞かなくてもちょっと予想ついたりしてるんだが。

「涼宮さぁん!」
「どのみち脱ぐんだから一緒だろ。…そぉーれっ!」
「わぁああっ」

朝比奈さんのタオルはお代官様ごっこの如くハルヒにひっぺがされた。そしてまあ…

「…マジででかい」
「きょ、キョンくんまで…」

朝比奈さんは泣きそうである。いや、しかし、マジで。

「…人って顔によらないんだな…」
「ですよね。ホントにそう思いますよ」
「あっはっは!まあみくる、でかいもんはでかいんだから諦めることだねっ!」
「そ、そんなぁ」

あ、これはマジで泣くかも。そう思ったとき、長門がポツリと言った。

「小さいよりはいい」

真理である。その場に居た誰もが黙り込んだ。いや、別に小さい奴が居た訳じゃないけどな。









ハルヒに剥がされる前に諦めて自分達でタオルもとって浴場へ行く。なかなか本格的な風呂らしく、檜の風呂に、岩風呂な露天風呂もある。

「さぁーて、こっからが本題だよんっ」

にぃ、と鶴屋さんが心底楽しそうな笑みを浮かべる。朝比奈さんはまた涙目で「やっぱり…あれなんですね…」とか言ってるし、古泉は古泉で少々青ざめている。一体どうしたって言うんだ?
そう思っているとハルヒがなにやら取り出した。ふむ。除毛…除毛クリーム?

「姫たるもの、無駄毛の処理はきっちりと!ってことで…」

…まさか。

「さーてキョン、そのすね毛、剃ろうか」

その時のハルヒの笑顔は見たこともないくらいだったと思う。そして俺の顔は素晴らしく青ざめていたに違いない。なるほど、風呂場に呼び出す訳だ…。

「あと腕と背中とかもな。あそこは剃らんでもいいけど」
「剃られてたまるか!」

女装するにしてもそこは関係ないだろう!

「だから別にしないって」
「というか除毛くらい別に自分で…」
「甘い」

ビシィッ!っと眼前にカミソリを突きつけられた。あっぶねーなお前!

「結構自分じゃ見れない所まで無駄毛ってあるもんだぜ?特に背中は自分じゃ無理だしな。姫の衣装で露出が高いの着てみろ。そんなのは衣装係として神が許してもオレが許さない」
「…俺も嫌だ」

と、長門が同意する。そういや、長門も手伝ってるんだっけか、衣装作り。
こくり、と長門は頷く。

「ゴシックロリータ、ロリータ、和服、カジュアル、マニアック。なんでも作る」

凄いな。しかしマニアックってなんだよそれ。

「制服。ナースやメイド」

なるほど。

「…わかった。それは良いとしてだな。腕や足くらいは自分で「オレが楽しく無い」

お前な。

「抵抗するならしてもいいぜ?もちろんこっちも対抗策は出させてもらうけどな?」
「ほう、見せてもらおうじゃないか」
「言うな。…よし有希」

前言撤回!勝てるわけないだろうが!
ハルヒが言った瞬間長門は後ろに回り込んでいて、俺を羽交い締めにする。お、おい、抵抗しないから離せって。

「有希、そのままな」
「わかった」

にんまりとハルヒが笑う。俺は短く悲鳴を上げたが、それを聞き止める奴などいなかった。






結果俺は、つるんつるんに、殆どの無駄毛を処理されてしまったわけである。

「さーて、次な次」
「は!?まだあるのか!?」
「あるある。とりあえず肌の手入れはしとかないと」

肌の手入れ?

「エステ」

言うや否や有無を言わさずいつの間にか用意されていたエステ用のベッドに押し付けられる。逃げ出さないようにか、俯せで。とろりと背中に冷たいジェルのようなものがかかり、びくりと体が震えた。

「お?もしかして結構敏感?」
「うあ…!」

再びつぅ…っと背中をなぞられる。やめろ、こそばい!

「ふぅん、こそばい、ねえ。…まあいいや、オレが直々に磨いてやるんだから、感謝しろよ?」

などとハルヒは偉そうに言っていたが、流石言うだけあって気持ちがよかった。思わず寝るかと思った。

「寝れば良かったのに。そうしたら色々と悪戯してやるよ」

…寝なくて良かった。











翌朝起きたら、肌がやたらとピカピカしていた。


たしかに、言うだけのことはあるらしいな。































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