今日もまた、1日が始まる。
Life of love
僕の1日はまず、目が覚めて準備を終えたら、愛しい人を起こす所から始まる。
「起きて、朝だよ」
一言目は、返事が無い。今日の眠りは結構深いらしい。
「聞いてる?朝だよ。もう、時間だよ」
「んー…」
眠たそうで、不機嫌な声が返ってくる。けれど、起きる気配無し。
「早く起きないと、ご飯冷めるよ?」
「…あと五分…」
いつもの言葉に、溜息一つ。
「五分を許したらあと十分、二十分、って増えてくじゃないか。ほーら、起きて」
「…どうしても、か?」
「どうしても。…君が遅刻したいなら別だけど」
「ん」
繰り返される日常。だけど毎日が新鮮なのは、きっと彼とだからだろうと僕は思うのだ。
卒業式の日。僕は彼を呼びだした。いや、呼び出すも何も帰りは一緒なのだが、人気の無い所でちゃんと話がしたかったから。
「卒業、おめでとう」
「それを言うならお前もだろ。…あーあ、SOS団も部活としては、今日で最後か」
涼宮さんは解散!とは最後まで言わなかった。だから多分、バラバラの大学に進んでいても、また時々メールで呼び出されて、きっとまた、高校の時と同じようにみんなで集まったりするんだろうな、と思う。
「みんな、殆ど大学もバラバラになっちまったからな」
「そうだね」
長門さんは、涼宮さんと同じ大学へ。僕は、希望している大学へ行かせてもらえる事になった。涼宮さんと同じ大学には別の人間が派遣されるんだとか。彼は、朝比奈さんと同じ大学へ。教育学部へ行こうかと思っている、と聞いたのは結構前のことだ。彼は子どもをあやすのに慣れているだろうから、丁度いいかもしれない。
「…それで、どうしたんだ?急に、呼び出して」
それも、ここに。と彼はパイプ椅子を引いていつもの場所に座る。僕は、いつもの場所ではなく、わざと彼の正面に回った。
「…引かないでもらえると嬉しいんだけど」
恐る恐る、僕はそう切り出した。
「僕と、一緒に暮らして欲しい」
「…え?」
彼の顔を見て反応を知るのが怖くて、僕はうつむいたまま書類を取り出して捲し立てる。
「場所は、ここ。もちろん、君が嫌ならそれでいい。嫌なら嫌って、はっきりいってくれて構わないから」
「…あのなあ、」
呆れ返った彼の声が聞こえた。ああ、やっぱり駄目だったかな。
「わざわざ俺の大学に近い場所借りて、どうするんだよ。お前が遠くなるだろうが。そりゃ、交通を考えりゃ俺の大学から遠くちゃ困るが…」
「え…て、ことは…」
「嫌だ、って言うと思ってたのか?…俺もお前の事好きなんだから、一緒に暮らせたら嬉しいに決まってるだろうが」
後半は小声だったけれど、僕の耳にはしっかり届いた。
ああ、嬉しくて死にそうだ、なんて思ったのも良い思い出だと思う。
そんな風に始まった同棲生活で、僕は意外な彼の姿を知ることになる。
まあ、元々朝が得意じゃないんだろうな、なんてことは知っていたのだが、まさかここまでとは思わなかった。
もちろん恋人同士なのだから、僕の家に泊まった事も何度かあったけれど、それでも中々起きない、なんてことはなかった。いや、よく考えてみれば起こす必要もないから寝るだけ寝てもらっていたような気がする。
「ほら、服は用意してあるから着替えて、顔洗って、歯を磨いて。その間にコーヒー用意しておくから」
「ん…」
それで幻滅する、なんて事はまったくなくて、本当にここを自分の家だと感じてくれているのだと思えて、嬉しい。こうして僕に世話を焼かせてくれるのも、甘えてもらっているようで嬉しいのだ。
朝は彼がこんな状態だから、自然と僕が作るようになっている。それほど料理は得意ではなかったけれど、彼と暮らすようになってからは大分上達したと思う。
「…おはよう」
「おはよう。寝癖ついてるよ」
「え、マジか。気づかなかった…」
やっと目覚めたらしいけど、完璧には目が覚めていると言いがたいみたいだ。一度目が覚めれば、あとは割としゃきっとするのだけれども。
「お前はいいよな…朝から爽やかで」
「誰かさんがお寝坊さんだからね。自然と朝は早起きになるんだよ」
そう言えば、うるさい、と言いながら足を蹴られた。相変わらず口と手が同時に出る人だ。多分、僕だけにだけど。
「ああほら、もうこんな時間だ。いってきます」
「ん。いってらっしゃい」
だからもうちょっとお前の大学に近い所にすれば良かったのにと言っただろうが、とつぶやく彼を背に、僕は1日の勉めを果たすべく、大学へ向かった。
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