小さな物音に気がついて僕が目を覚ますと、窓際で彼が膝を抱えるようにして座り込んでいた。…どうやら今日はいつものお寝坊さんが珍しく目覚ましより早起きしたらしい。
それにしても彼は休みの日はぐっすり寝る派じゃなかったかな。

「…あーぁ。雨だぜ」
「え?…ああ」

それで早起きしたのか、と窓の外を覗き込んで納得した。

「折角出かける予定だったのにね」

新しくこの辺に店ができたから、そこに行ってみようか、なんて言ってて。
別にいい、という彼を押し切って折角新品のカメラも用意したのに、

「無駄になっちゃったかな」
「そ…んなことないって」

あ、僕のマネ。そう思って隣を見ると、君は悪戯っぽい顔で笑った。
それにつられて思わず笑うと、彼は急に部屋の窓を開ける。風向きが丁度あっていたのか、雨が部屋の中にぱらぱらと入って、髪に、顔に、あたる。
起きてそんなに時間が経ってなかったんだろうか、彼の髪の毛がねぐせで少し跳ねていて、かわいいな、なんて思ってしまう。

「…なんだよ」

笑っていたのに気がついたんだろう、少し不機嫌にそう聞き返される。ごめんごめん、ねぐせが。そう言って髪に触れれば、そのくらい自分でできるっての、なんて言いながら手は振り払わない。…きっと、僕だけの特権。

「…まあ、いいか」
「え?」
「雨なら雨でそれなりの過ごし方があるだろ」

そう言って彼は台所に向かう。多分朝ご飯。僕はその間にコーヒーを作る。何も入ってねえし、と彼がぼやくのが聞こえる。…そう言えば買い出しをすっかり忘れていたような。
それでもある程度豪華な朝食を準備してしまえるんだから、彼は魔法使いみたいだな、と時々思う。

「コーヒーは入れたよ」
「ん」

お揃いの猫の足跡のマークが可愛いマグカップを手渡せば、暖かさに彼が少し目を細める。猫みたいだ。

「あー…おなか空いたな。食べて良い?」
「ああ」

いただきます、と手を合わせて一口。いつものことながら美味しい。

「美味しい」
「…あったり前だろ」

そう言いつついつも今日はどうかな、なんて気にしているのを知ってるよ。…気づいてるなんて、言ったら怒られそうだから言わないけど。
食事し終わると、ゲームの時間。彼は結構ゲームをするのが好きだから、僕もよくつき合う。

「あ…っはっっはっは!!この展開はないだろ!」

ゲーム画面を見ながら君は盛大に笑うけど、そんなゲーム画面より君を見てる方がよっぽど面白い。多分これも口にしたら怒られるけど。

「ほん、っと、おかし…っ!」

あー、腹痛い…!
なんて言うくらいまで笑う君につられて、僕も笑う。こんな風に二人笑える時間が、とても好きだ。

「はー…笑った笑った」

こてん、と肩に寄りかかる君を、ぎゅっと抱き寄せる。早起きしたせいかあくびをひとつ。ちょっとムッとした僕は彼にキスをする。

「っん…こ、ら…昨日もしたんだから今日はなしだろ」
「眠そうだから快適に寝かせてあげようかな、なんて」
「遠慮する。快適にじゃなくて疲れて眠り込む。俺は折角の休日をそんな風に過ごすつもりは無いぞ」
「残念」

肩をすくめると彼が立ち上がりながら軽く頭を叩く。

「ほら、行くぞ」
「え?」

どこへ?

「散歩。雨の中ってのも悪くないだろ」

早くもコートを被った君はもう玄関にいる。おいてくぞ、と声をかけられて僕も慌てて追いかけた。

「…珍しいね」
「俺が自分から二人で歩こう、なんて言い出す事がか?」
「自覚はあるんだ」
「うるさい。…いいだろ、たまの休みぐらいは」

雨だから人もいないだろうしなっ
そう言い捨てるように先に外に出た君の頬が赤かった事には、気づかなかったことにしておこう。








日曜日の雨も、君と一緒なら悪くない。





























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