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12月18日。どうやら世界は消えているらしい。いや、何が起こったのかは知っている。正しくは世界が改変されたのだ。
神である俺にはどちらの現象も見えているからな。
改変された世界での俺は、朝目を覚ます。この時点での違和感はない。
通常の世界では、普通に目が覚め、普通に授業を受ける。
改変された世界。学校につき教室へ入ったあたりで違和感を覚える。
通常の世界。まだ何もない。
改変された世界。やっと涼宮ハルヒの不在を悟る。朝倉涼子を確認。他のメンバーの姿を探すものの、古泉一樹は一年九組ごといない。朝比奈みくるもおかしい。
通常の世界、昼休み。まだ何もない。
改変された世界。放課後部室で長門有希と出会うが、知っている人物とは別人である事を悟る。
通常の世界。涼宮ハルヒの思いつきによりクリスマスで子供たちをもてなすことになり、そのための買い出しへ行くと言い出す。
改変された世界。パソコンに気がつき触るが何もない。長門有希から白紙の入部届けを受け取る。
通常の世界。階段から落ち頭を強打。そのまま病院へと運ばれる。
「…こんなもんか」
特筆すべき出来事はこのくらいだろう。他には何もない。
「…蒼白になった顔は中々面白かったな」
あいつらには悪いが、とつぶやいて俺は観測を続ける事にした。
さて、12月19日が始まる。残り二日。
改変された世界。相変わらず涼宮ハルヒがいたはずの席に、朝倉涼子が存在している。くだらない会話を交わす。
通常の世界。病院に運ばれた俺の体は大きな外傷もないのに目覚めない。朝比奈みくるや涼宮ハルヒがつきっきりで見ているせいか、あいつは不用意にそばに寄れず、いらいらしているらしい。らしい、というのは俺の意識が今どちらの世界にもない不安定な所にあるため、しっかりと覗けないのだ。
断片しか覗けない。
改変された世界。いきなり放課後まで時間が飛ぶ。文芸部室に向かい、なんとなしに本を読む。以前長門有希に渡された本を発見、長門有希の残した栞を発見するものの、決定的な鍵は見つからない。
通常の世界。疲れたらしい涼宮ハルヒが眠ったのを見て、古泉一樹が俺の体に近づく。
「…今、どうしてらっしゃるんですか」
その声は思ったよりも震えていた。
「また、ふざけているんですか」
怒っているのか、泣いているのか。
俺の返事がないのを見て取ったのか、結局それ以上何も言わずに古泉一樹は病室から出て行った。
改変された世界。何故か長門有希の部屋に招かれ、後から来た朝倉涼子とともに夕食を摂る。帰り際、長門有希に好意を持っているかと聞かれるが、まあどちらかというと好感の持てる方だろう。
通常の世界。涼宮ハルヒが俺の顔をじっと見つめている。時々、キョン、と呼びかけるがもちろん返事はない。今回ばかりは、その力も通用しないからな。
真夜中、涼宮ハルヒが寝静まったころ、長門有希が病室に現れて、またすぐ帰って行った。
さあ、あと二日。
期限があるとわかっているんだ、楽しんだって悪くはないだろう。
12月20日。これで、この三日間が終わる。
改変された世界。重い気分のまま登校。しかし一変して事態が急変化。涼宮ハルヒの情報を手に入れる。すぐさま俺は学校を飛び出した。
通常世界。まだ俺は目覚めない。涼宮ハルヒがするわけにはいかないので、古泉一樹が俺の体を拭いたり、服を変えさせたりしている。本来なら看護士がやるのだが、涼宮ハルヒが嫌がったためだ。特に外傷もないので医者は好きにさせている。古泉一樹は時々俺に話しかけるが、もちろん返事はない。
改変された世界。二時間ほど経って下校が始まる。涼宮ハルヒと古泉一樹を見つける。ジョン・スミスというキーワードを涼宮ハルヒに突きつけ、改変された世界と通常世界のパスをつなぐ。北高へ向かう。
通常世界。涼宮ハルヒの仮眠のため朝比奈みくるが交代している。それ以外に変化はない。
改変された世界。朝比奈みくるを回収し、部室へ向かう。鍵がそろう。俺、長門有希、涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹が部室にそろい、長門有希の用意した脱出プログラムが起動。少しの後、プログラムを起動。世界が、戻る。
通常世界。こんどは長門有希が病室を訪れていた。不安なのか何かと喋る涼宮ハルヒに対して、無言で俺を見つめる長門有希。…もうすぐ世界がつながる事を長門有希も感じているのだろう。
改変された世界。再び北高に移動。ただし三年前の。未来の朝比奈みくると合流。長門有希の元へと向かい、世界の改変者が誰なのかを知る。そして、三年後の12月18日へ。
…あとはもう簡単だ。多少のハプニングがあれど、そこは俺の知る所ではない。
「…ここまでだな」
さて、目が覚めたときあいつはどんな反応を返すだろうか。
それを楽しみに思いながら、現実世界へと戻るため意識を戻した。
俺は目を開ける。瞬時に場所と時間を悟る。私立の総合病院、12月21日午後5時過ぎ。隣には眠る涼宮ハルヒと、リンゴをむく古泉。
「…おや」
その声は小さく震えていた。動揺を悟られまいとしているのは、今の俺がどちらなのかわからないからだろう。
「やっとお目覚めですか」
「ああ」
むくりと起き上がると、軽く頭を振った。長い間体を動かさなかったせいで、少々筋肉や骨がきしむ。このくらいすぐに回復できるのでわざわざ直すようなことはしない。
…この際点滴は抜いても良いだろう。鬱陶しい。ぶちり、とそれを引き抜くと古泉が目を剥いた。が、それでどっちだかわかったらしい。
「…今回はどういうつもりだったんですか」
「怒ってるのか?」
「心配したんですよ!…あなたは神なのに、特に外傷もないのに三日も意識不明だったんですから…!」
思わず声を荒げた古泉は、涼宮ハルヒがいるのを気にしてかすぐに声を小さくした。別に、まだ目覚めたりはしないんだがな。
「そうしてなきゃ面倒だったんだよ、色々とな。まあおかげで楽しめたが」
「あなたという人は…!」
カタン、と音を立ててナイフがサイドテーブルにおかれた。…ふむ、相当怒っているらしい。
「どれだけ心配したと思っているんですか…!」
「心配じゃなくて、お前が不安だったんだろう」
「っ…ええ、もちろんそれもありますよ」
指摘されて一瞬つまるが、古泉は反論せずに頷いた。
「でも、本当に心配したんです、あなたに何かあったんじゃないかって…!」
よほど不安だったんだろう、古泉は泣きそうになっていた。
…さすがに悪かったか、と俺は古泉を引き寄せて、お詫びのつもりでキスをする。それが悪かったんだろうか、ついに古泉は泣き出してしまった。
「わかってましたよ…あなたがそう言う人だっていうことは。あきらめてもいますよ…!」
「悪かった」
「…いえ、僕こそ、すみません…取り乱して…」
そうは言うものの涙が止まる気配もないので、俺は古泉を抱きしめたままその涙を肩で受け止める。古泉の手が腰にまわされ、強い力で抱きすくめられる。
でもまあ、寂しかったのはお前だけじゃないんだぞ、という気持ちを込めて古泉に言ってやった。
「…退院したら、お前の部屋行って存分にヤろうな」
もちろん思わず古泉の涙も止まって呆れられたのは言うまでもない。
公式で消失イベントやってたので、それに乗っかってサイトで三日間開催した消失祭りの残骸。