12月31日。無事に一年が終われそうなことにほっとしつつ、僕は何をするでもなくぼーっとテレビを眺めていた。
特集番組が流れていくのを、一人の部屋でじっと見ている。今の僕はどれだけ寂しい人間に見えるだろう。

「…暗いぞ、おい」

振り向こうとしたらゴン、と額を叩かれた。となりには一人分の重み。

「折角一年の終わりなんだからもう少し喜べよな」
「はあ、まあ、それはそうなんですが…、チャイムくらい、鳴らして下さいよ…」
「別に良いだろ、害があるわけじゃないんだし」

…チャイムを押したり押さなかったり、分からない人だ、と思う。
僕が仮面を被ってしまわないようにそうしているんじゃないだろうか、なんて思ってしまうのはやはり自惚れなのだろう。

「…それで、どうして今日はまた?」

そう僕が問いかけると、彼は急に不機嫌な表情を見せる。…何か、間違えただろうか。

「…なんだよ、俺が年末、一緒にいたいと思っちゃだめなのか?」
「え」

思わず面食らってしまう。まさか、そんな風に思ってくれてたなんて。

「もういい、帰る」
「わ、ちょ、ちょっと待って下さい!」

制止されて振り向いた彼は明らかに不機嫌だった。

「なんだよ、俺は帰る」
「すみません、僕が悪かったですから、帰らないで下さい」
「別に俺なんかいなくてもいいんだろ」

完璧に機嫌を損ねたらしい。それでもこうしてまだ帰らないでいてくれているのだから、喜ぶべきなのか。

「何でも言うことを聞きますから、」

このとおり、と頭を下げ、ちらりと彼を覗き見る。
…まさか最初からこれが狙いだったんじゃ、と言いたくなるくらい、彼は満面の笑みを浮かべていた。




「折角だしな、48手なるものをやってみようと思うんだが」
「え」

思わず固まったのは僕だけではあるまい。48手。つまり少なくとも48…やる、ということなのでは?

「つってもまあ、色々苦しい部分はあるからな、多少省こうと思う。…でだ」

そこで彼は本を取り出した。まさか。

「資料を持って来たからどれが良いか考えよう」

…あきれかえって言葉も出ない。こういうことって、普通相談してやるものだろうか。
しかも、その本も浮世絵の内容そのままらしく、ご丁寧に絵まで一緒である。…なんというか、えぐい。

「浮世絵なんてこんなもんだろ」

僕の視線に気がついたのか、彼が若干にやにやしながらいう。…わかってますよ、そんなことくらいは。

「今まで騎乗位ばっかだったしな…たまにはバックとか正常位やってみるか?」
「騎乗位ばかりになったのはあなたのせいじゃないですか…」

少々あきれつつそういうと、彼は悪びれもせず、だってお前が逃げるだろ、と言った。

「…逃げませんよ」

苦笑しながらそう言えば、彼は疑わしそうにこちらを覗き込む。

「僕はあなたのことが好きですから、こういう行為が嫌いなわけじゃありません。何より、健全な男子高校生ですよ?」
「でもなあ…お前いっつも及び腰だし…」

それはあなたががっつきすぎてるせいだと思います、とは言わないでおいた。

「…じゃあとりあえず後ろ櫓と揚羽本手と…」

そう言いつつ彼は次々といろんな体位を指差して行く。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「…なんだ?」
「さすがにこれ、多すぎますよ」

まさか、一晩でこれだけ全部しよう、というのだろうか。

「あ?いけるだろ、このくらい」
「いや、さすがに無理ですって!」
「涸れてんなぁ…」

しみじみと言わないでいただきたい。どう考えてもあなたに体力がありすぎるんです!

「仕方ないな…じゃあまあとりあえず適当に体力と相談してやるか」

やることは確定してるんですね。いえ、なんでもないです。もうあきらめはついてます。

「…本気でいつか涸れるんじゃないかと思うんですけど…」
「んぁ?まあ大丈夫だろ、なんたって俺がいるし」

何か言おうと思ったが、何も言えず、結局ムードも何もないままに、彼にキスをした。








「し、っかし…ん、は…っ」
「…どうしました?」

指を動かすと、ぐち、と卑猥な水音が響く。ローションでとろとろになったそこは、既に受け入れ態勢は万全なのだが、やっぱり彼を傷つけたくはないので、念入りに、と思ってしまう。その度に怒られるのだけれど。

「…お前が積極的なのも、いいな」

と、彼は僕の頬にキスをする。そう言えばセックスも好きな割に、たわいないスキンシップも好きだよな、と今更思う。
少なくとも今のキスがもういい、という合図なのはわかったので、指を引き抜いて自分の性器を挿入する。彼が小さくふるえ、ぎゅう、と締め付けられて苦しい。未だに、繋がるときにくる一番最初の快楽の感覚には慣れないみたいだ。
それでもまあ、二回目、三回目くらいになれば、彼も余裕を取り戻してくるのだが。

「最初は…揚羽本手、でしたっけ」
「ん…お前は、そのままでいい…」

言われた通りそのまま奥へと押し入れると、彼が足を後ろにまわしてぎゅ、っと締めて来た。

「っ…結構、きますね…」

快楽をやり過ごすためか、足にも、狭まった場所にも力が入り、正直結構キツい。

「ぁ、ふ…いい、けどこれ…動き、づらいな…」

あなたがぎゅうぎゅうに締めてますから。

「う、るさいっ…次だ次、えーっと…深山本手」
「こう、でしたっけ」

彼の片足を持ち上げて、肩に担ぐ。嫌でもさらに結合が深くなるせいか、彼が小さく悲鳴を上げた。

「ま、まてっ、う、ごくなよ…?」
「そう言われましても…僕も結構辛いんですよ?」

大体彼はいつも好きなようにするのだ、僕がちょっとくらい好きにしても構わないだろう。
そんな風に思ったのであとで怒られるのを覚悟して僕は動き始める。

「ひっ、ぁ、ああ…っ!」

彼の瞳に小さく涙が浮かぶ。感じすぎて辛いのかもしれない。

「…可愛いです」
「ん、ぁあっ…あ、とで…ひぁぅっ…み、てろよ…!」

…ちょっと早まったかもしれない。しかしまあ、どうせ満足するまでつき合うのだから、今更とも言える。

「、…正常位も、悪くないですね」

含み笑いでそう言ったら、思い切り締められた。…そのくらいの余裕はあるらしい。

「あ、あぁっ…ゃ、も…だめ、だ…っ」

言うや否や彼は僕をぎゅう、と締め付けながら白濁としたものを吐き出す。今まで散々、嫌というほど締め付けられたせいで、僕もつられるようにして彼の中に吐き出した。
とりあえず一旦彼の中から抜いておこうと思い腰を引いたら、がしっ、と腕をつかまれた。

「まだまだ、やるんだから…そのままだ」

え、と問い返す間もなく、彼が僕の方に体重をかける。つまりいとも簡単にいつもの騎乗位にされてしまったのだが。
彼はにやりと笑って言った。

「年越しまでには、まだまだ時間があるだろ」

















さてまあ、あれから散々しぼり尽くされるかと思うくらい、いろんな体位を試させられたわけなのだが。
どういうわけかやっぱりいつもの体位で落ち着いてしまっている。
精も根も尽き果てる、というのはこの事だろうか、というぐらいぐったりしつつも、性器はしっかり反応していて、まだまだ若いってことなのかとほっとするのはやっぱり間違っている気がする。

「…お、そろそろか」

ふいに彼がつぶやいて、僕は彼を見た。

「A happy new year. 古泉」
「え?」

ああ、そう言えば、今日…もとい、もう昨日か…は大晦日だったんだ。
もしかして、一人で寂しいだろう僕の事を気遣って、こうして訪ねてきてくれたんだろうか。
僕はくすりと笑って、彼に口づける。

「あけましておめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくおねがいしますね?」
「おう」

ちょっとくすぐったそうに彼は笑って、キスを返して来た。
なんというか、わかりやすいようでわかりにくい人だ、と思う。

「…というわけで早速秘め始めだな」

…今、なんて?

「秘め始め。一年の最初に夫婦が交わること。まあ、俺らは夫婦じゃないが」

…今更だと思うのであまり突っ込まないでおこうとおもうが、とりあえず。

「…繋がったままで秘め始め、って言うんでしょうか…」
「さぁ?別にいいだろ」

…言うと思ったけど。

「…まだまだ、いけるだろ?」

にやり、と笑う人に、あきらめて僕は降参のポーズをとった。



とりあえずまた今年も、彼に振り回される年なんだろうな、と半ば確信しながら。











神キョンと年越し。





























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