「ちょ…っと、ホントにそのつもりで来たんですかあなた…!」
「言っただろ、この前病院で」

そう言って不敵に笑う人に、今現在僕は押し倒されている。




12月21日から数日。クリスマスパーティのあと。
彼が退院してすぐあの言葉が実行されると思っていた僕は、この数日間何もないアプローチに油断していたらしい。

「今日、お前の家行くぞ」
「え?あ、はい、どうぞ」

なんて、なんの疑問もなく彼に言ってしまったのだから。
今思えば昼間の彼が僕の家など知っているわけないのに。
ピンポーン、と玄関のチャイムがなり、僕はドアをあけて彼を迎える。

「こんばんは、お待ち…っ!」

していましたよ、と言いかけた所で彼は僕にいきなりキスを仕掛けて来た。ちなみにドアは開けっ放しであり、まずいと思うのだが。
そうこうしているうちに後ろに押され、やっとドアが閉まる。…誰にも見られてなければいいが。

「っ…ちょ、…っと、ま…ってくださいよ…!」
「んっ…は、…どうした?」

けろりとした顔で言うが、僕としては冷静に状況を整理させていただきたい。
クリスマス後、つまりすっかり元気な彼。僕の家で、いきなりこんなことをしかける。

…ということで、冒頭につながるわけである。

「聞きましたよ、聞きましたけどね」

よりにもよってクリスマスに、これだとは。

「…今日はあなたが祝われてる日じゃないんですか?」
「あ?」

彼は僕の上にのしかかったまま暫し動きを止めた。
…もしかして、忘れているんだろうか。パーティだってしたのに。

「…ああ、そういや今日はキリストの生誕日か」
「一応キリスト教では神が生まれた日なんですから、あなたにも関係があるのでは?」
「全然ないな」

と彼はきっぱりと言い切る。

「神様っていっても宗教的な物はまったく関係ないんだよ。なんつーか、名も無き神、みたいなところもあるし。もっとも」

もしかしたら俺さえも涼宮ハルヒが願ったから生まれた神かもしれないけどな、と彼は少し遠い瞳をした。

「キョンく…」
「まあ折角神様の誕生日だって言うし、クリスマスと言えばプレゼントってのが恒例だからな」

そんなことを言いながら彼はどこからかリボンを取り出して、それで僕の両手を拘束する。
…これはいわゆるお約束というやつなのだろうか。一瞬でも心配した僕が馬鹿だったんだろうか。

「ということで、お前をくれよ、なんなら俺をやっても良いけどな?」

にっこりと笑う彼に僕はあきらめてお手上げのポーズ…はできないので、縛られたままの腕を上げた。

「せめて、玄関から移動させてください」












なんとなく、彼も悪かったな、とか、寂しかったとは思ってくれたのかもしれない。
だからこそこうしてその分を補おうとしてくれているのも、わかる。
…ただ、直情的すぎると思うが。
彼との行為はもうすっかり慣れたというか慣らさせられたというべきなのか、どうすればいいのか教え込まれてしまっている。
キスを交わしながら服を脱がせ、抱き合う。鼻から抜けたような声が時々して、それがやけに艶かしい。彼のこれは時々わざとなんじゃないかと思う事もあるが、そうではないらしいというのは、毎回の事で実証済みである。
ただ、本当に相性が良すぎるから、苦しいくらい感じるんだろう。

「ふ、ぁ…も、キスはいいから…」
「…はい」

くすりと笑って正直な彼の体を愛撫すれば、笑ったのが嫌だったのか潤んだ瞳でにらまれた。
…時々。本当に時々だけれど、彼はこの快楽だけを求めて僕につき合ってくれているんじゃないだろうか、と思う事がある。
そう思うのが失礼だ、と思うようになってからはそう経っていない。何しろ、彼が一番最初に体をつなげた日から人の心を読む事をやめただなんて、誰がわかるだろう。

――――きっと彼も、本当は怖かったんじゃないかと思うだなんて、馬鹿げているだろうか。

でなければ、人の意など介さないはずの神が、心を読むのをやめる理由が思いつかないのだ。彼が僕の事を気に入って、その上で、人間的に僕の事を好きになってくれたのだとしたら、


とても素直に、愛おしいと思うのだ。わがままで、俺様で、時々小さな揺らぎを見せる、彼を。


「んぅ…っ…そ、こばっかじゃなくて…ちゃんと、下も触れよ…っ」
「でも、好きですよね、ここ触られるの」

赤く色づいたそれを強めに刺激してやれば、彼が顔を歪める。もちろんそれが痛みのせいでない事は十分承知している。

「くっそ…最近調子に、乗りやがって…」
「…そんな僕も、結構好きなんですよね?」

んなわけあるかっ!とすぐにひねくれた言葉が返ってくると思ったのだが、反応がない。不思議に思って顔を上げて、思わず僕まで固まってしまう。
…図星だったんだろうか。ちょっとした冗談のつもりだったんだが。

「…可愛いです」
「か、可愛い、言うな…!」

真っ赤になった顔を隠そうとする腕を押しのけて、僕は小さくキスをする。図星をつかれるのは苦手のようで、彼が小さく震えた。

「好きです、あなたが」

返事はない。知っている。その分彼は、体で示してくれるから。ぎゅっと抱きしめられて、苦しいくらいキスをされる。言葉に出すのは苦手でも、伝わるから良いと思う。寂しいと思う事がないわけじゃないが、その分僕が彼に言えば良いだけだ、とも思うのだ。
ただ、あんまりそんな風に言ってると、怒られることもあるけれど。
キスをしながら僕を受け入れる狭い場所を指で解して行く。流石というべきなのか、彼はこの行為についてあまり苦痛を感じないらしい。その点については、相性が良くてよかったのだろうと思う。

「ひ、ぁ、…ん、はっ…ぁ」

やられっぱなしは癪なのか、後ろを解されながらも彼が僕の性器を愛撫する。そうすることで僕の指の動きが不規則になるのがまた良いらしい。直接聞いたわけじゃなくて、なんとなくわかる事、なのだけれど。

「ん…も、いい、から…」

そう言うと僕の肩をつかみ、彼は体を持ち上げ、僕の体をまたぐ。すっかりこの体勢がおなじみになってしまっているのだが、それも悪くない、と思う。最近は少し慣れたせいか、彼は自分勝手に動くのが好きだし、何より僕も、彼の顔が見えて良いと思う。…まあ、見られているのはお互い様なのだけれど。

「っ…ん、は…」

ゆっくり、ゆっくりと彼が僕を銜え込んでいく。彼としてはそれがもどかしいようなのだが、僕はこれでいいと思う。感じすぎて、気絶されても困るし。

「…っなに、考えてん、だ…」

僕が思わず笑っていたのに気がついたのだろう、ちょっと責めるような口調で彼が言う。

「あなたの事しか、考えていませんよ、四六時中」

本当なのだから、これぐらい言っても罰は当たるまい。そう思ったら、また彼は顔を真っ赤にしていた。…こんなに彼が赤くなるなんて、珍しい。
それだけ彼も、寂しいと思っていてくれたのだろう。

「…大好きですよ」

そう囁いてキスをしたら、いつか絞りつくしてやる…!と小さく呪う声が聞こえた。
…それまでせいぜい、体力をつけておこう。まず体力が持たない気がするのだが。

「全部、入りましたよ」

そう言って彼の下腹部を撫でるとぴくん、と小さく体が揺れた。

「…お前の手つきは、いちいちエロい…っ」
「良いじゃないですか、気持ちいい事、あなた、好きでしょう」

…軽く叩かれた。言葉にするのも苦手だが、言葉にされるのも苦手な人だな、と改めて思う。
あなたの分も、僕が言ってあげてるんです、と言ったら怒るだろうか。それとも、少しでも言葉をくれるだろうか。
でも、今は。

「愛してますよ、どんなあなたも」

このくらいが、ちょうどいいんだろう。


























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