「っ…」

がくがくと足が震える。それに会わせるように盆の上に乗ったコップもカタカタと揺れている。

「ほら、どうしたんですか?」

優雅にソファに座って、にやにやと俺を眺めている古泉を俺は思い切り睨みつけてやったが、だからといってどうなることでもない。
頭が揺れる度、首にぱさぱさと髪があたり、それすら敏感に感じてしまう。くそ、ヅラまで被せるなんて悪趣味だ。
歯の根が噛み合ない。かちかちと微かな音が聞こえる。同時に、ブブブ…という小さな機械音が身体に響く。


つまりまあ、なんというか。
またしても俺は、古泉の変態趣味に付き合わされているのだった。







「今回はゴスロリメイドさんで行こうと思うんですよ」
「……は?」

思わず俺は聞き返したのだが、古泉はそれさえ無視してクローゼットの中からなにやら取り出してくる。白と黒を基調とした、ひらひらとしたドレスっぽい服。さらに俺の髪の色とそっくりのヅラ。そして白いフリフリのエプロン。
そこまではまだ良い。古泉の奇行は今に始まったことじゃない。しかし俺にとって問題だったのは、次に取り出してきたものだった。

「…古泉、なんだそれは」
「見て解りませんか?」

解りたく無いが解ってしまう。ピンク色をした小さな楕円形の機械。コードつき。

「ローターですよ。道具を使って、というのもなかったですから、この機会にどうかと」
「どうかと、じゃねえっ!」

一体お前はそれで何をさせる気だ!?帰る、と言い出そうとしたがあえなく失敗。俺は古泉の腕の中にすっぽりと収まる。じたばたと暴れてみるが、それも慣れっこな古泉はいとも簡単に俺を全裸にしてしまう。
俺の来ていた服は隅に追いやられ、古泉は鼻歌でも歌い出しそうにご機嫌のまま俺に服を着せていく。まずは太腿までのストッキング、そしてスカートと上、ヅラ(ちなみにストレートのセミロング)を被せエプロンを付け、最後にカチューシャをのせ、完成。スカートの丈が短いので、メイドというよりウェイトレスのようである。
というか脱がすのも好きで着せるのも好きってどんな変態だ。

「失礼ですね。まあ、あなた限定でならどんな変態にでもなれますよ?」
「ならんでいい。俺の平穏の為にも」

古泉は指にたっぷりとローションをとると、俺の後ろに塗り付けるようにしながら、つぷりと指を侵入させる。不本意ではあるが、ヘタに手を抜くと痛い目を見るのは俺なので、仕方なく古泉をまたぐと肩に掴まり腰を浮かせる。
気になるのは古泉の動きの方で、今回は念入りに解すこともせず、適度に緩まったところで指をぬいた。まさか。

「今日はこれを使いますからね」

そう言って古泉がたぐり寄せたのは先ほどのローター。出して来た時点でそうするだろうと思ってはいたが…。
片足をがっちりと古泉に掴まれ、抵抗することも出来ない。いやどうせしたって無駄なのは解るんだが、反射的に抵抗したくなる。
ピンクのそれはゆっくりと俺の中に押し入れられる。冷たくて硬い感触が、いつもより強い異物感を感じさせる。

「大丈夫ですよ、すぐ慣れます」

そう言いながら古泉はぐいぐいと容赦なくローターを奥へ押し込む。もう無理、というくらい奥まで入ってから指が引き抜かれ、コードが太腿に固定される。
何をする気なんだ、と疑問に思っていると、古泉が俺を立ち上がらせた。

「じゃあキョンくん、飲み物をとって来て頂けますか?」
「は…?」
「メイドさんですから、やってくれますよね?」

俺はいつからメイドになったんだとかそもそも男なんだからメイドでなく執事なんじゃないかとかというかなんでお前の命令を聞かなきゃならんのだとかいう突っ込みが頭を駆け抜けたが。
――――またなんてベタベタなシチュエーションなのだろうか、だった。
何を言っても無駄なのはいつものことなので、俺は早々に諦めてキッチンへと向かう。が、

「っ…!?」

ブブ、と小さな機械音と共に蠢く体内の異物に、がくりと膝をつく。おいおい。

「あ、そうそう、言い忘れていましたが…」

全然言い忘れてないような口調と笑顔でそいつは言った。

「中のそれ、遠隔操作出来るタイプなのでご注意を」











そうして今に至っているのである。俺の手にはお盆とそれにのったコップ。中にはもちろん水。中身をチョイスしたのは俺で、下手なものを運ぶと零した時に問題があるからである。
といっても、今も充分零している。古泉は絶対ちょっかいを出すと解っていたので中身を少なめにしておいたのだが、それでも揺れるため、ちゃぱちゃぱと僅かながら溢れている。
面白がってるのか俺が零すのを期待してるのか(まあ多分両方だ)、古泉はさっきからランダムに強弱を切り替えている。そのせいで余計に足がガクガクと震えるのだ。太腿を伝う先走りが気持ち悪い。
もうちょっと、という所まで言った時、不意に今までで一番振動が激しくなった。思わず膝の力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまう。もちろん盆の上のものなんてひっくり返ってしまった。
最悪というべきなのは、中身は全部古泉が頭から被ってしまったというところだろうか。まずい。
念のためと言うかなんというか、コップ自体はプラスチックなので危険はない。しかしまあこの調子だとこれを理由に色々とさせられそうである。というか最初からそれが目的で、最強にまで強度を上げていなかったに違いない。

「キョンくん」

静かに名前を呼ばれる。まだ中で振動するそれに、声を上げないよう必死で唇を噛み締めていると、古泉が手招きをする。立ち上がれないので這いつくばるように古泉の傍へいくと、またも膝の上に乗せられた。

「ベタベタに濡れちゃったんで、舐めて下さいよ」

お願いするような口調ではあるものの、俺を見る瞳は拒否することを許さない。そろそろと古泉に顔を近づけると、頬を伝う水を舐める。

「ん…ふ、ぁ…っ…く、」

口を開けば自然と喘ぎ声が漏れて、これをすぐ近くで古泉に聞かれているのかと思うと、羞恥心で顔が紅くなった。口を閉じてしまいたかったが、そういう訳にもいかない。
再び強弱の変わり出したそれに舌を噛みそうになりながら、言われた通りに古泉の顔に滴る水を舐める。身体の中で蠢いている物体は、もう少し、という刺激をくれない。もどかしくてどうにかなりそうだ。
耐えきれず、俺は古泉の口に噛み付くようにキスをする。実際ちょっと噛み付いたかもしれないが。

「っ…そこには水はありませんよ…?」
「こい、ずみ…」

口にするのは非常に不本意だったが、このままでは埒があかないのは学習済みだ。

「も、我慢できん…挿れて、くれ…」

生理的な涙で潤んで来た瞳で見つめると、古泉は「もう少し色っぽく誘っていただけると僕としては非常に嬉しいんですけどね」、などと言いながら広いソファーに俺を押し倒した。うるさい、これが精一杯だ。
こういうとき確かにスカートというものは便利なのかもしれないなどと馬鹿げたことを考えつつ、硬いモノが出てく感触の後はもう、熱い塊を感じているしかなかった。







付け足しておくならば、またも俺は家に帰れなかったということぐらいだろうな。
























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