拍手ログ。キョンの悪夢シリーズ第二弾。
順に 夫婦な古キョン、ハイテンション長門2、ラブラブ古キョン、もしも普通の世界だったら、悪夢ではない夢。で。
さて、気が付けば俺はどこかわからんお宅にいた。うちではないし、知ってる人間の家でもないだろう。新築の一軒家だしな。
まあ大体こう突拍子もない時点で夢なんだなーと言うことが判明するため、とりあえずじっとすることにしてみた。
すると隣の部屋から赤ん坊の声が聞こえてくる。なんだ?
「あー、うー、ぱ?」
「パパですよー。ふふっ、可愛いですねぇ」
明らかに浮かれたデレデレどころかドロドロって勢いのこの声には聞き覚えがある。
間違いなく古泉だ。何やってんだこいつ。
しかし古泉と子ども、ということは前回(もっと前か?)の続きなわけか?どおりでこんな家見たことないはずだ。
しかし俺の考えは甘かった。事態はもっと恐ろしいことになっていたのだから。
「まー、あ、むー」
「ママですか?ママはこっちですよー」
そう言った古泉はよりにもよってここに繋がるドアを開けて俺の前までやって来やがった。まさか、
「ほぅら、ママですよー」
「あー、ぶっ、ま、ぁまっ!」
「一体どっちが産んだんだ!?」
完璧に突っ込み所を間違えたな、これは。
ママ、と呼ばれたからには…俺か? 俺なのか!?
翌日の放課後、例によって例の如く古泉を殴っておいた。いつもよりニヤニヤしてるように見えたから多めにな!
部室のドアを開けると誰もいなかった。珍しい事もあるもんだ。そう思いながらなんとなくの気分で俺はいつも長門が座っている場所でのんびりと風を受けていた。
がちゃり、とドアが開き、長門が入ってくる。
「ああ、悪いな、今どくから…っ?!」
何を思ったのか、長門は俺の膝の上に腰掛けた。おい、どうした?長門?
「やっだなぁ、その他人行儀な呼び方。ゆきりんって呼んでって言ったのに〜」
お前か、ハイテンション長門。つまりこれは夢なんだな。
「夢なら夢でいいから、ちゃんと相手してよ〜。結構寂しいんだよ?大人しくしてなきゃならないのって」
そう言うと俺に背中を向けていた座り方から、俺の顔が見えるように座り直す。…あの、長門さん、なんかその座り方卑猥なんですが。
「やーん、キョンくんのえっち〜」
にやにや笑っている。確信犯か!
そして更にそのまま抱き着かれた。と思ったら長門の手が腰を撫で回す。おいおいおいおい!
「うわー、細いなぁ〜」
「逆セクハラ禁止ーー!!!」
叫んでからぐったりとベットに倒れ込む。何つー夢見たんだよ!
対面座位っぽいとか思った俺は死んどくべきだと思う。うん。すまん長門。
翌日、学校で長門に会った俺は、頭を撫でておいた。まあなんか嬉しそうにしてたから良いだろう。
俺は今、古泉の部屋に居た。
何故解るのかと聞かれれば知っているからだし、何故居るのかと言われれば誘われたからだ、と答えるだろう。
何しろ、俺と古泉はいわゆる恋人同士っていうやつだからな。
「…どうしたんですか、くすくすと笑って」
「んー?…なんでもない」
そう言いながら、笑いは止まらない。幸せだと、感じるからだ。
「…ねえ、教えて下さいよ」
「当ててみろ」
「うーん…幸せだから、ですか?」
「なんだ、わかってるんじゃないか」
つまらなさそうに言ったのが伝わったんだろう、古泉はちょっと苦笑していた。
「まあ、普通に考えればわかりますよ」
「ふぅん、なんでだ?」
俺が笑いながら聞くと、古泉が俺に顔を寄せた。
「僕も、幸せだからですよ」
そのまま唇がかさな―――――
「―――ってたまるかぁああああーーーーーっ!!!」
恐らく今までで一番目覚めの悪い夢だったに違いない。びっしょり汗をかいている。もちろん冷や汗である。
なんつー夢見ちまったんだ!ハルヒの時以上に冗談じゃない!ああ、まったくだ!
もちろん例の如く古泉にはあった途端殴る蹴るの暴行を加えておいた。それでも何かニヤニヤしてやがったがな!気色悪い!
その日の夢はそう、なんだか少しおかしかった。
ハルヒはなんてことない、不思議な事が大好きなだけの普通の女の子。
長門はあの12月の時の様子にとても似ていたけれど眼鏡はなく、はにかむように笑うかわいい子だった。
朝比奈さんはおっちょこちょいな学園のアイドル的な先輩で、隣では鶴屋さんが朗らかに笑っていた。
俺はハルヒとはクラスメイト、長門とはほんの少しだけ会話を交わす中、朝比奈さんと鶴屋さんに至っては遠くから眺めている。ただそれだけの存在だった。
違うのは、そこにまったく古泉の姿がないということだけだった。
そりゃそうだ。ハルヒにへんてこな能力がなけりゃ古泉が転校してくる理由もない。いや、それを言ってしまえば長門は?朝比奈さんは?という話なのだが、あの二人は別に自分を偽っているわけではないのだ、最初から学校にいたところでおかしくはない。
古泉は、あいつだけは、自分をずっと偽っていたのだから。
自分を偽らずに過ごせる世界はあいつにとって幸せなのだろうか。SOS団で過ごすこの世界よりも、ずっと。
「―――――…」
目が覚めて、それが夢だった事に安堵したのは、何故だろうか。
あんな夢を見た後だろうか。その日の夢もいつもと少し違っていた。
俺は小さな暗い部屋に居て、小さな青いビー玉のようなものを手のひらで弄んでいた。
そのうち、俺の手の中の小さなそれを覗き込むように、ガラス玉のような瞳をした少女が隣に座り込んでいた。
じっと、その球を見つめる瞳には、じわじわと光のようなものが浮かんで行く。
そしてまたその隣に、そのビー玉をとてもキラキラとした瞳で見つめる少女がいた。
綺麗、とか、これはなに?、とか、そんな感情で満ちあふれていた。
そのうちもう一人少女が表れ、俺の手の中の青いビー玉に触れて、俺の手の中で転がして遊んだ。
その少女の瞳もきらきらとしていて、とても輝いていた。
そして最後に、一人の少年が現れて、俺の隣で、俺の手に触れ、俺に笑いかける。
ねえこれで、寂しく無いでしょう、と。
真っ暗だったはずの部屋は明るくなり、手の中のビー玉も、光に触れてきらきらと輝くのだ。
「…また、変な夢見たな…」
そう言いつつも、何故か俺はどこか晴れ晴れとした気持ちだった。