拍手ログ。キョンの悪夢シリーズ第三弾…っぽい。童話編。 今回はアリスです。配役はお楽しみに(笑





俺は今、走っていた。なぜなら追いかけられているからである。
誰って?

「待って下さいよキョンく…うさぎさーん!どこへ行くんですかーっ」
「そんな必死に追いかけられて誰が待つかぁああああああ!!!」

古泉である。それもアリスの格好の。

「やだなあ、古泉じゃなくてアリスって呼んで下さいよ」

ね、とウィンクをするが気色悪い。なんか知らんがアリスの格好が意外と似合っていることすら気色悪い。

「僕はキョンくんがこちらでも十分似合うと思うんですけどね」
「精神上よろしくないので遠慮しておく」
「そうですよね、キョンくんに追いかけられるのも夢のようですがここはやっぱり僕が追いかけなくちゃつまらないですし」

もういい、黙ってろ。これが夢だと言うのならどうして今すぐ起きないんだ、俺。どうせ夢ならアリスな朝比奈さんに追いかけられたかったぜ…。

「ああほら不思議の国へ続く穴が見えてきましたよ、二人で愛の逃避行と行きましょうか」
「誰がそんなもん…うぎゃああああああっ!!!」

がしっ、と古泉につかまれたかと思えば、俺たちは穴の中へ一直線に落ちていた。高い高い高い!どんだけあるんだこれ!


しかし逆にそれが良かったのかもしれない。何しろ地面につく頃には古泉は綺麗さっぱりいなくなっていたからな。スカートのおかげで上でまだふわふわ浮いているらしい。中身なんざ見た日には悪夢から二度と目覚められない気がするので、見ない。
しかしどうしてそんな高さから落ちて平気なのかと聞かれれば、なんのことはない。したはキノコで出来たふわふわのクッションだったのだ。少々胞子がついたかもしれんがな。
ちょうど俺が通れるくらいのドアを発見したのでさっとそれをくぐる。するとそれは見る見るうちに小さくなった。

「便利なものだな」
「そんな便利なものなら早く僕も通していただきたいですね」

げ、追いついてきやがったか。

「…ふむ、これってたしか机の上においてあるクッキーを食べるんでしたっけ?」

あ、そっちは…
予感は的中したらしい。ガンっ、と扉が蹴られた。

「…大きくなっちゃいましたね」

瓶の薬を飲むんだよ。…ってなんで俺は古泉を応援してやってるんだ。追いつかれたら困るのは俺だ俺!

「…そんな、どうすれば…」

古泉の弱り切った声が聞こえて、俺は少なからず驚いた。こいつでもこんな弱気になることあるのか。

「このままじゃ…僕はキョンくんにおいて行かれてしまいます…それどころか…」
「こいず…」
「こんな大きさじゃキョンくんとセックスもできないじゃないですか…!」

ちょっとでも可哀想だと思った俺が馬鹿だった。お前は一生そこで出られなくなってろ。
俺はすたこらさっさとその場を逃げ出す。

「あ、待って下さいよ〜」

無視だ無視。それに古泉のことだ、どうせすぐ小さくなるための薬をみつけて追っかけてくるに違いない。



「女王の城はそちらではない」
「っと、長…」

長門か、と言おうとしたのだが驚いて固まってしまった。
何故って?長門がチェシャ猫だったからだ。

「わ、笑わないチェシャ猫…」
「…問題はない。アリスの前では笑う」

それはそれで怖いんだが。

「女王の城はあっち。早く行った方が良い」

おっと、そう言えばそういう役回りだったな。

「サンキュ、長…」
「キョンくーん、どこですかー?」

うげ、もう追いついてきやがった。俺はその場に隠れる。

「あ、長門さん、キョンくん見ませんでしたか?」
「え、キョンくん?見てないよー。どーせまた追っかけ回してるんでしょー。嫌われるよー?」

…誰だこれ。いや長門だが。たしかに今現在ニコニコ笑っている。

「大丈夫です!僕とキョンくんは赤い鎖で繋がってますから!!」

いやに強固だなその絆。一切ないけどなそんな事実。

「まあいいや、帽子屋さんなら知ってるかもよー?行ってみたら?」
「帽子屋さんですね、ありがとうございます!」

古泉はスカートを翻して走って行く。うむ、今更ながらきもい。
…ってちょっと待て!古泉の行った方向は城の方向とおんなじじゃねーか!

「途中から道が違う。安心して行って」

そう言う長門はすっかり無表情だった。…なんか怖いな。
しかし、ここでそのままじっとしていても何も変わらない。俺は長門に礼を言うと、その道を歩き始めた。




「…ん?」

ふと、軽やかな音楽が聞こえ始めた。なんというか、半分汽笛みたいな音も混じってないか?

「365日お祭り万歳!」
「あっはっはっ、万歳っ!」

…えーっと、この底抜けに明るい声は…。

「何でもない日なんてありはしないのよ、何かしら毎日今までの歴史の中で何かがあった日なんだからやろうと思えばいつでも祭日ってもんよ!」
「ほらほら、少年…っとと、アリスも一緒にお茶を飲もう!」

…なんというか、予想通りハルヒと鶴屋さんである。こう見る限りは、ハルヒが帽子屋、鶴屋さんが三日月ウサギらしい。…何故か眠りネズミに扮した国木田の姿まで見える。

「いえ、ですから僕はキョンくんを探しているんです、知りませんか?」
「キョン?知らないなぁ、見てないよ。時計ウサギのことだろう?」
「ええ、そうです、とーっても可愛らしい僕のウサギさんのことです」

キモイ!誰がいつお前のになった!

「まぁまぁ、キョンなんて放っておいてパーティに参加しなさいよ、古泉くん!」
「そうそう!折角色々あるんだしさっ!」
「そんなことにつき合ってる暇はありません!僕は一刻も早くキョンくんに会いたいんです…!」

俺はまったく会いたくないがな。

「そんなに追っかけ回したって好かれないと思うけどなぁ…」
「何を言いますか!僕とキョンくんは前世も、現世も、来世も永遠に結ばれる運命なんです!」

うわ今すぐ断ち切りてぇそんな運命。チェーンソー辺りでお前ごとばっさりと。

「あっはっは!古泉くんは面白い事言うねえ!…あれ?」

しまった!鶴屋さんに見つかったらしい。えーっと、城はこっちだよな?

「キョンくんじゃないっかいっ?おーい!」
「え!?キョンくん!?どこですか!?」

さて、とっとと逃げるぞ。

「キョンくーん!」

古泉の俺を呼ぶ声をBGMにしつつ、俺はすたこらさっさと森にまぎれて行った。「いっその事犬なら彼のにおいもたどれるのに…」という声が聞こえた気がするが気のせいだろう。キモすぎる。




がっさがっさと茂みをかき分け進むと、立派な城が見えて来た。
まあ、それの下にはとてつもなく広いバラの迷路が広がっていたりするのだが。

「さて、と…」

ちょっと高い所から見てみたが、そう難しくもなさそうである。女王のところへたどり着かない限り、この妙な世界から抜け出す事も出来ないようなのだ、急ごう。

「キョンくーん、どこですかぁーっ?」
「うげっ」

どうやら古泉も追いかけて来たらしい。後ろの方から声がした。しかし大丈夫だ。この迷路なんだ、あいつも同じ条件下のはず…。

ガサガサっ!

「あ、キョンくんvV」

…こいつに常識という物はないんだろうか。うん、ないんだろうな。迷路だっつーのに普通にバラの道を突っ切るな!
しかし俺もそう言ってられない。古泉に見つかった瞬間から同じようにバラ園を城に向かって突っ切る。門番が見えた。

「助けてくれ!変態アリスに追われているんだ!」
「キョン…じゃなかった時計ウサギ、ちょうど良かった、女王様が呼んでるから城に入ってくれ」

ラッキー!助かったぜ。女王が誰だか知らないが感謝しないとな。

「ちょ…なんで僕の邪魔をするんですか!通して下さい!」
「不審者をいれるわけにはいかないだろうが!門番として!」
「ええい、こうなったら…ふーんもっふ!!」

…何やら爆発音が聞こえた気がするが…悪いな谷口、お前の犠牲は忘れない。

「まだ死んでねーよ!」

…とかなんとかいう谷口には精一杯古泉を足止めしておいて貰うとして、俺は最上階に向かってひた走る。なんなんだこの螺旋階段は。目が回る。

「つ、ついた…」

その頃にはすっかり息が上がってぶっ倒れそうである。

「遅い、遅すぎますよ時計ウサギさん。あたしに首をはねられたいんですか?」
「…え?」

聞き慣れた声のはずなのに、俺は一瞬その声を聞き慣れた声だと認められなかった。いやしかしこのエンジェルボイスは…

「この国ではあたしが法律なんですから、ちゃんと従って下さいね?」

うん、間違いなくあの眩しい微笑みといい、この可愛らしい声といい朝比奈さんに違いはないのだが…
その笑顔の裏に、黒い物を感じるのは何故だろう。

「キョンくん!ここですか!」

バンっ!と扉が開いて古泉までもが飛び込んでくる。っち、やっぱり谷口くらいじゃ相手にならなかったか…。

「なんですか、騒々しいですね。今からあたし、キョンくんに大事な用があるんですから、とっとと消えてくれませんかそこの変態さん」

…字面だけなら丁寧なんだが…本当にこのお方、朝比奈さんなのか?

「それはこちらのセリフです。僕のキョンくんを返して下さいね。羊の皮を被った腹黒女王様?」

二人とも笑顔なのだが…明らかに温度が下がっている。怖い怖い怖い!頼むから俺を間に挟むな!

「こうなったら…」
「ええ、そうですね、それが一番でしょう」

待て待て待て、二人して俺を見るな!

「どちらがいいか、彼に決めてもらおうじゃありませんか」

やっぱりか。

「キョンくん、もちろんあたしを選んでくれますよね?」

上目遣いに胸を強調。間違いなく即答ではい!と頷いてしまうところなのだが…
古泉が、怖い。
なんというかこう、そこで頷こうものなら何をしでかすかわからん、というような顔をしている。しかしだからと言って、

「もちろん僕ですよね?」

なんて言いながらじりじり迫ってくるやつを選ぶつもりもない。どうする俺!
二人がじりじり迫ってくる。当然俺もじりじり下がる。
…ふと、足から地面が消えた。ん?あれ?なんて思っている間に俺は真っ逆さまに落ちて行く。

「うわああああああ!」




死ぬ?死ぬのか俺!?

…!

何かが聞こえる。なんだよ、俺は今落ちてるんだよ!
ん?というか人の声が聞こえるわけがない。なんだ?

「キョン!!」
「どわぁ!?」

体のバランスが崩れて俺は椅子ごと床に倒れ込む。天井は…教室の、天井か?

「何寝てんのよ、授業は終わってもう放課後よ、とっとと部室に来なさい!」
「あ、ああ…」

夢、だったのか。


すたすたと歩き去るハルヒを見ながら思う。






…夢で、良かった…。





























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