act. Carpe viam et susceptum perfice munus!








静かだったのは数日だけで、俺たちは再び忙しい日々を迎えていた。何しろ軍と言うのは戦闘がなければお飾りに等しい集団であり、上の連中はそうではないのだと証明をしたいのか、本国の自警をさせられることになったのだ。

「お飾りの昇進とは言え、地位は上がったって言うのにな」
「仕方がありませんよ、軍としては涼宮さんに戦闘を起こして欲しくないのですから」

そう、実はつい先日、敵の諜報部員(つまり朝倉のことだ。朝倉をこう呼ぶと長門も同じ扱いになりそうなもんだが、その辺は統合思念体と協議がすんでいるんだろう)を素早く見抜き危機を救ったと言う理由で、ハルヒを含めたSOS団5人が階級を一つ上に上げられたのだ。…まあ特に何が変わったって訳じゃない。給料がちょっと上がったくらいか?

「部下の功績はあたしの功績ってわけね。別に表彰されたかった訳じゃないからどうでもいいけど…」

朝倉が再び移動になった、なんてことを報告すればハルヒがまた首を突っ込みかねないと判断した政府が、俺と古泉と長門が朝倉を排除したと報告した上で朝倉が敵の諜報部員だったとハルヒに伝えたのだ。しばらくは、

「へぇ、キョンがねぇ…?」
「一体何があったわけ?」

などとハルヒに聞かれたのだが適当に流しておいた。古泉曰く、

「軍は涼宮さんを上に上げるだけ上げて、早くお飾りの人間にしてしまいたいんだと思いますよ」

と言うことだったが真偽のほどは知らん。長門は、

「情報統合思念体からは特に何もない」

とだけ後から報告してくれた。朝比奈さんに至っては

「そ、そんなことがあったんですか…大丈夫でしたか?キョンくん」

と、ほぼ蚊帳の外である。

「しかしだな、俺はこれ、逆効果だと思うぞ」
「町の方々にとってですか?それとも、涼宮さんに?」
「ハルヒにだ。あいつのことだ、町の警備がつまらん、なんてことになれば『また戦闘が起こらないかしら』、とか言い出しかねないぞ」
「結構似てますね、涼宮さんの真似」

こいつ、人の話聞いてんのか。

「いたた…っ、聞いてます聞いてますっ、だからヘッドロックかけないで下さいってば!」
「ふんっ」

降参とばかりに両手を上げたので俺は古泉の頭を解放する。

「真面目な話、機関もそのくらいは気が付いています。恐らくは政府も。ですが宇宙空間で暇になるよりは本国にいる方が娯楽もあるし気が紛れるだろう、と」
「…つまり自警というのは建前で俺たちは休暇を頂いたわけだ」

どうりで警備だというのに私服なわけだ。

「私服警官、とでも称しておきましょうか」
「アホ。…お前今日やけにテンション高いな」
「え?いや、そんなこと…あるかもしれないですけど」

最近ストレス溜まってたのか?と少し古泉を心配する。顔色は悪くないみたいだが。

「昇進したからと涼宮さんがまた何かやりださない可能性がない訳ではありませんでしたから…少しだけ」

あの日の看病以来、もしかしたら俺の気のせいかも知れんが古泉は少しだけ、色々話してくれるようになったと思う。それを俺は嬉しいと感じていて、最初あれだけ嫌がっていたのが恥ずかしいくらいだ。

「まあ、そういうことならゆっくり休むか。…どこか行きたい所、あるか?」

本国の季節は冬に設定されているようで、雪でも降りそうなほど寒い。本国は戦艦で、天気なんてないから降らないがな。

「とりあえず、喫茶店にでも入って考えませんか?」
「賛成だ。このままじゃ寒くてかなわん」
「寒がりなんですか?」
「寒がりの暑がりだ。…お前はどっちも大丈夫そうだな」
「顔に出ないだけで、暑いのも寒いのも苦手ですよ。軍の人間なんて多分みんなそうですよ」

あれだけ空調が一定の場所で過ごしてればな。
そんな風に話ながら喫茶店に入る。

「とりあえず、最近出来た店を中心に回ってみるか?どうせ1日目なんだ、ブラブラしたって構わんだろ」
「じゃあ、周辺情報を取得しますね」
「おう」

俺がダウンロードしても良かったのだが、国木田が改造済のコイツで色んな所にアクセスするのは色々マズイだろう。何しろ長門も無言で絶賛していたくらいだ。国木田、お前は何もんなんだと小一時間問い詰めたい。どうせ「僕は僕だよ、ちょっと機械には詳しいだけ」とのらりくらりとかわされてしまうだろうがな。

「…あれ」

古泉が首を傾げながら端末を見る。

「どうした?」
「いえ…何かおかしな情報が」
「見せてみろよ」

古泉から端末を受けとって操作する。『すみません、そこで待っていて下さい。みくる』

「なんだ、朝比奈さんからのメールなんじゃないか」
「いえ、それが、アドレス自体は朝比奈さんではないのですよ、ですからおかしいと思いまして…」
「よかった、二人ともいてくれたんですね」

突如女の人の声が聞こえてきて、俺たちは振り向いた。

「いてくれるのは規定事項だしわかってたんだけど…それでも不安で…ちょっとほっとしました」

その人は、俺たちがよく知っているようで知らない人だった。

「あの…わたしが誰か、わからない…なんて言わないですよね?」
「朝比奈、さん…?」

戸惑う俺たちの前で、朝比奈さんはにっこりと微笑んだ。




「はい。朝比奈みくるです。ただし、あなたたちの知るみくるより更に未来から来ました」




























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